いよいよGoogleが、アメリカで販売されるほぼ全ての本を、電子化して売り出すことが決まった、というニュースが流れています。
ほぼ全社がグーグル電子書籍承認 印刷本から急速シフト – 47NEWS(よんななニュース)
今のところ、情報源がこの47ニュース(共同通信社)しかないので、まだ不確定要素はありますが、いずれにしてもやがて書物はデフォルトで電子本とリアル本が併売される時代は、もうすぐそこに来ているようです。日本での動きは、まだ遅々として進んでいないのがもどかしい限りですが、これによって「絶版」という概念から解き放たれた「本」が、どのような道を歩むのか、予想が難しい感があります。そこで、私的に感じている電子書籍とリアル書籍の魅力と欠点をそれぞれまとめておこうと思います。
1.電子書籍の<魅力>
- どこにでも持ち運ぶことができ、事実上無限大に収納できる
- 本文に対して全文検索がかけたり、カーソルを置くだけで辞書を引いたりできる
- 動画、音声、ウェブ連携などマルチメディア化が可能
- 印刷・流通が不要なためリアル書籍より安くなる
- 在宅のままネットを利用して瞬時に購入・閲覧ができる
- 半永久的にコンテンツを入手することが可能
2.電子書籍の<欠点>
- 万単位のパソコン、電子ブックリーダーなどをそろえなければ見れない
- 目が疲れやすい
- 厚さの概念が無いため本の中での位置関係が分かりづらい
- 将来も長期間に渡って閲覧が可能であるかは何の保証もない
- バッテリが切れたり機材が故障すると閲覧が不可能になる
3.リアル書籍の<魅力>
- 読むための機材は一切必要なく、故障等の機械トラブルに影響されない
- 目にやさしい
- 保存にさえ気をつければ半永久的に所持できる
- 触覚も使用するので、記憶により残りやすいと考えられる
- 傍線、付箋、コメント等を記入して残しておくことができる
4.リアル書籍の<欠点>
- 重くてかさばる
- ページ数にほぼ比例して価格が上昇することが避けられない
- 索引や付箋に頼る以外、検索の手段がない
- 絶版になると入手が非常に困難となる
今のところ、思いつくのはこのくらいです。もしお気づきの点があれば、コメント欄でお知らせ下さい。
ただ、まとめてみて感じたことは、「意外にリアル書籍の欠点が少ない」、ということでした。それだけ人間は、「モノ」としての書物に依存しているということなのでしょう。ぱらぱらと指でページをめくり、「よし、あと5ページで読破だ!」というのが一目で分かるのは、リアル書籍のみです。電子書籍は、どこまでいっても平坦なままです。最近の電子ブックリーダーは、紙をめくる様子をアニメーションでシミュレートしたりしていますが、それとて所詮は「動く絵」でしかありません。読んでみると分かると思いますが、電子書籍はリアル書籍に比べて、「読んだぞ!」という充実感が決定的に低いと思います。
なぜでしょうか。思うに、リアル書籍は「コンテンツを中心に、手触り、本の中での位置関係など総合的な体験を提供する」のに対し、電子書籍は「専ら情報だけを提供する」という役割が主眼に置かれているという違いがあるからではないでしょうか。私たち、書物しかない時代を経験している世代にとっては、「文字を読む」というのはほぼ本以外ありえないものと思ってきたわけで、脳もそれに併せて学習していると思います。ところが、専ら視覚情報だけに頼って文字を読むことが一般的になり出すと、脳の動きも変わってきそうな気がします。それはそれで未知数ですが、リアル書籍に慣れている人間の脳にとっては、電子書籍が与える体験は空虚であり、軽さを覚えるのです。そこに違和感を感じるのです。
実際、私たち人間は「リアルな世界」に生きているのであって、五感をフルに使って生活してきました。それは、これからも人間が人間である限り変わらないと思います。マトリックスのような機械に支配されて脳だけで生きる世界に移行したいのなら別ですが。ところが、それにもかかわらず、近代という時代は、あまりにも「視覚」が過度に偏重されている時代なのではないでしょうか。そして、そのようにして人間が専ら視覚に頼って生きるようになるとき、そこにあるのは他の感覚の相対的な低下であり、また霊的感受性の著しい低下ではないかと思うのです。現代の人々が宗教に関心を示さなくなったのは、理性の力が充実してきたからなどではなく、むしろ視覚に頼りすぎて、霊的世界を感じる能力を失っただけなのではないか。私はそう思います。
電子書籍には、上記にあげたような様々なメリットがあります。けれども、その先にある世界はどのようなものなのかを、注意深く見つめ、吟味していなければ、足もとを救われるかも知れません。
そんなことを感じた今日の記事でした。
コメント
同感です。注意深く、今の時代を生きる知恵を教えられた気がします。
霊的感受性の低下・・・その通りですね。
静まって、主の前に祈る時間を大切にしていきたいと思います。