このたび、外出用のモバイルWi-Fiルーターを入れ替えました。これまでは、以下の構成でした。
プラン:DTI バイブリッドモバイルプラン
回線:Docomo FOMA 3G MVNO
速度:下り7.2Mbps、上り5.7Mbps(理論値)
月額料金:3,610円(機器代込)
ルーター:NetIndex RS-CV0C
このサービスが開始された2011年3月現在では、史上最安で3Gが使い放題になる画期的なプランでした。それまでの常識を一気に2000円以上下げる価格で、度肝を抜かれたことを覚えています。その後あの3.11東日本大震災が発生し、停電+固定回線遮断を経験した私は、通信手段確保の観点から、このサービスを申し込みました。当時は大人気だったため、実際に届いたのは2011年5月のことでした。それ以来、約1年半に渡って使用して来ましたが、以下の点が不満でなりませんでした。
- とにかくスピードが出ない。Mbpsクラスが出るのは極めてまれ。また、しばしば「詰まる」現象が発生する。
- 価格競争が進んだ結果、2012年秋の水準では維持費が決して安くはなくなってきた。
- 組み合わせ指定のルーターの電池の持ちが悪く、かつ非常に使いにくい。
それでも「二年縛りで解約時は残期間に応じて回線分の違約金+機種の残債分」が1~2万円にもなるため、解約はせずに使い続けて来ました。それを見直すことにしたのは、「私の場合そもそも外で通信手段が必要な機会がかなり限られているのに毎月の維持費が高すぎる」こと。この一点でした。
そこで、とにかく低価格なサービスを、ということで調査を開始した結果、以下のチョイスがあることがわかりました(これ以外にもありますが、縛りがあったり使い勝手が悪いものは覗いています)。
名称 | 速度 | 月額料金 |
DTI ServersMan SIM 3G | 100kbps | 490円 |
BB.exciteモバイルLTE | 128kbps | 750円 |
イオンSIM(b-mobile) | 150kbps | 980円 |
IIJmio 高速モバイル/D | 128kbps | 980円 |
この表だけを見ると、DTIやBB.exciteが料金面では最も安いように見えます。また、同料金であってもイオンの方が速いように見えます。
しかし、ネットワークというものは、名目上の数字では計れないものがあるのです。特に「格安」を売りにするだけのサービスの場合、利用者が集中して輻輳が発生し、いくら待っても繋がらない、ということが起こります。私が去年DTIを契約した後に経験したのはまさにこのことで、その「遅さ」を身をもって経験する羽目になりました。
重要なのは名目の数値ではなく、「実測値としてどうなのか」ということです。分かりやすく喩えれば、いくらフェラーリでも、首都高速ではノロノロ運転になるのと同じです。重要なのは「実際に時速何キロで走れるか」な訳です。
さらに、国内の主要なサーバーからの、ネットワーク的な「距離」も重要になります。インターネットというものは、何台ものサーバーをバケツリレー方式でパケットを送り届ける仕組みになっています。その際、経由するサーバーが多ければ多いほど、「最初の反応が返ってくるまでの時間」が長くなります。この時間をはかるのが「ping」というコマンドで、単位は「ms(ミリセカンド)」で表すのです。
格安サービスの問題点は、実測スピードが理論値の数分の一であるということと、pingの応答時間が劇的に遅いことです。例えばBB.exciteの一例ですが、以下のURLにあるスクリーンショットを見て下さい(他サイト様の画像へのリンクです)。
これを見ると、下りのスピードは172kbps、上りは192kbpsですから、公称値以上の数値が出ていることになり、一見すると速いように見えます。ところが、pingの数値を見ると、なんと「1371ms」となっています。これは、途方も無い長さです。標準的なインターネット回線では遅くとも400~500ms以下に収まるべきものですし、光回線では100ms以下になるべき数値です。
これが意味していることは、「BB.exciteは、走り出せばそこそこスピードが出るが、走り出すまでが途方もなく遅い」ということです。たとえて言えば、大型トラックのようなものでしょうか。これは、ウェブサイトの閲覧など、沢山のファイルをダウンロードするような場合に、モロに影響してくる訳です。BB.exciteはサービスインしてまだほとんど日が経っていないにもかかわらずこれですから、今後はもっと遅くなるでしょう。
その点、IIJmioの優位性は、「安定してそこそこ速い、pingは極めて速い」ということです。以下の表を見て下さい。私が現在使っている、DTIのハイブリッドモバイルプランと、IIJmioのスピード比較です。(傾向を見るため、5回テストしました)。
DTI | 下り [kbps] | 上り [kbps] | ping [ms] |
1回目 | 143 | 187 | 385 |
2回目 | 165 | 234 | 388 |
3回目 | 157 | 168 | 397 |
4回目 | 180 | 190 | 410 |
5回目 | 146 | 219 | 400 |
IIJmio | 下り [kbps] | 上り [kbps] | ping [ms] |
1回目 | 151 | 72 | 175 |
2回目 | 152 | 98 | 234 |
3回目 | 159 | 97 | 172 |
4回目 | 185 | 96 | 183 |
5回目 | 147 | 77 | 207 |
いかがでしょうか。上り速度こそ半分程度ですが、下り速度は完全に拮抗しており、公称値の128kbpsを軽く上回る数値が並んでいます。なおかつping値は半分以下の数値が並んでいます。ネットを閲覧する際に重要なのは下り速度ですから、これはもう、十分にDTIの代替になりうることがお分かりでしょう。そして、両者の値段は3610円 vs 980円と、三倍以上の開きがあります。年間で言えば、数万円の差になります。これって、一体何なのか、という気分になりますよね。 そういう訳で、今回IIJmioを選択することにしたのです。
・・・
ただ、IIJの場合、問題点が一つあります。それは、適合するモバイルWi-Fiルーターを自分で用意しなければならない、ということです。
結論から言えば、これにはNTTドコモのL-09Cがベストです。IIJmio 高速モバイル/Dの適応機種リストを見れば分かりますが、LTE、テザリング、アンテナピクト表示の全てに対応している数少ない機種なのです。しかもバッテリーが3Gなら8時間も持つのも◎です。
唯一の問題点は大きさ。これについては以下の比較画像をご覧下さい。
右からL-09C、RS-CV0C、そしてフリスクの箱です。大きさが想像できるでしょうか。
大きいことは悪い事ばかりではなく、L-09CはRS-CV0Cの二倍、電池が持つ訳です、これはモバイル用途にとってはかなり重要な要素だと思います。
何より、このL-09Cは、現在Yahoo!オークションで新品が5000円程度で入手可能だ、ということです。通常この手のルーターは、1~2万円は軽くかかりますので、これは画期的と言えます。
実際にL-09C+IIJmioの組み合わせでiPod Touchにて使用してみましたが、ニュースアプリ、Facebook、Twitter等であれば、ほとんど何のストレスもなく利用することができました。私はまだ試してはいませんが、ネット上のレビュー記事を見ると、Skypeや050Plusも十分実用になるそうです。
最後にIIJmioのもう一つの利点を。それはLTEに対応しているサービスらしく、「追加料金を払えば、LTEのスピードを生かせる」ということです。具体的には525円で100MB分の使用料を得ることができます。つまり、「今日はちょっと素早く調べ物をしたいな」という日は、オンラインで525円の追加クーポンを払えば、超高速になるということです。毎月5日そういう日があったとしても、まだ3000円程度。スマートフォンを下手に契約すると、その倍は取られます。
いかがでしょうか。非常時のバックアップ回線としては最適ではないでしょうか。維持費も毎月980円で、好きなときにいつでも解約出来る自由があります。私的には、これは非常に良いチョイスだと思っていますがどうでしょう?
※2012.12.14追記
検索エンジンから来られる方が多いようですので、追記しておきます。12月現在、IIJmioに対抗する有力なサービスが次々と始まっています。代表的なものは以下です。
- 楽天ブロードバンドLTE
980円ながらLTEで200MB分までの無料パケット料が含まれているサービス。一見すると非常に魅力的ではあるが、注意事項の欄を見ると「1カ月間の合計通信量が200Mバイトに達した場合、通信速度を100Kbpsに制限します」と書いてあります。よくある「三日間」ではなく「一月間」でこれです。これでは200MBを越えれば(LTEならすぐに越えるでしょう)事実上、常時100Kbps制限と同じです。一方、IIJmioの場合は「3日間で366MB」以上だと速度規制がかかります。(128kbpsでそれを越えるには6時間半以上連続でデータを流す必要があり、実際には滅多にない状況でしょう)。さらに楽天は知名度も高いことからユーザー数も多くなることが予想され、名目100kbpsの速度が実際にはさらに低下するという可能性が高いように思います。IIJmioにはそのような恐れは低いと考えられます。従って実際の運用環境を考えるなら、現在のところまだIIJmioの方が優れていると考えられます。
(※2013.3.21追記)
本日、IIJは以下のようなプレスリリースを発表しました。

これによると、従来128kbpsであった接続速度が200kbpsまで、料金据え置きのままで引き上げられる、とのことです。これは非常に朗報と言えましょう。記事中にも記したように、IIJmioはこれまでも名目128kbpsながらそれを上回る速度を出してきましたが、それが200kbpsとなれば、日本通信の300kbpsサービスも、実接続速度で視野に入ると思われるからです。他社のサービスも追従してくると思われますが、IIJmioには高い接続応答性と安定性という揺るぎないアドバンテージがありますので、動画などを多量に閲覧するのでなければ、メイン回線としての利用も視野に入ってくるものと思います。イチオシの状況がさらに強まりました。
(※2013.4.26追記)
本日、さらに以下のような発表がなされました。
これによれば、上記の200kbpsへの速度引き上げに加えて、LTE速度で毎月500MB分まで使用する権利が6/1から無料で提供されるとのことです。当初はキャンペーンとしてですが、終了翌日の9/1からは正式サービスにそのまま格上げだそうですから、実質、大幅なサービス向上と言ってもよいでしょう。キャンペーンとして始めることから見て、8月末までの間に、さらにサービスが強化されることも考えられます。今後も注目だと思います。
(※2013.4.26追記2)
なお、これとは別に、NTTコミュニケーションズによる次のようなサービスの提供が先日開始されました。
「NTT Com、月額980円で1日30MBのLTEデータ通信サービス」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130408_594955.html
個人的に、現時点でIIJmioの最大のライバルとなりうるサービスは、このサービスだと思います。30MBというデータ量は、動画を2〜3本見ると到達してしまう量で、それを超えると夜12時まで100kbpsに制限されます。メイン回線としての利用は、少々厳しいかも知れませんが、サブ用としてなら可能性があります。恐らく大人気となるでしょうから、実際の接続速度や応答性がどの程度となるのか、未知数です。2013年夏〜秋にかけて頃が、一つの目安になるでしょう。ただ、Amazonで買うだけでよく、縛りもないので、テスト用にとりあえず購入してみてチェックする、というのも良いかも知れません。
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