日本といえば「技術立国」などと言われ、私たちも何となくそのように感じながら日々暮らしていますが、実際には優れているのは製造業(それも現在は中国と韓国に追い上げられている)だけで、ITを使いこなすという点においては非常に心許ないのではないでしょうか。特に官公庁・地方自治体における惨状は目を覆うばかり。 以下の記事は、その点を端的に示したものと言えます。
ウィンドウズ2000期限切れ、15万台に脅威 [YOMIURI ONLINE]
なんと、未だに Windows2000 が、そこかしこの自治体で使用されているというのです。 しかもこの Windows2000、Microsoft がセキュリティパッチの提供を先頃完全に停止したのに、です。元々 Windows2000 には、Professional Edition しかない、つまり企業向けをターゲットに開発されたという経緯はあります。(XP以降は家庭向けに機能を削った Home Edition が新たに設けられた。 Vista、7でもこれは同じ)。それにしても、10年もの猶予がありながら、一体彼らは何をしていたのか、と思います。
一般人であれば、セキュリティが甘くても、自分が被害を被るだけです。けれども、最も個人情報の集積している自治体から個人情報が流出するなら、大きな問題になり得ます。 こんな状況なのに、「サイバー攻撃にさらされないように、ただ祈るだけ」という自治体がある、という・・・。 あきれてしまいます。
上記の記事では、一貫して「お金がない」ということが理由に挙げられていますが、これは理由になりません。 なぜなら、Linux という選択肢があるからです。何も、単価もサポートも高価な Windows を使い続けなくても、フリーの Linux を活用すればよいのです。 今の Linux は、基幹システムにも耐えうる性能を持っていますし、日常業務も無料の OpenOffice.org を活用すれば十分使いものになります。実際、多くの企業や自治体が、この組み合わせで実際に業務を行っているのです(例えば ここ や ここ)。Windows2000発売当時ならいざ知らず、今は時代が変わっているのです。何も手をこまねいて、危険な Windows2000 をネットにつなぎ続ける理由はどこにもありません。
お金をかけない解決策はすでにあるのです。にも関わらずできないのはなぜか。以下のいずれかの理由としか考えられません。
(1)IT担当者が不勉強で、上記のような解決策があることをそもそも知らない。
(2)IT担当者は導入したいが、上役が無理解で稟議が通らず移行できない。
(3)IT担当者は導入したいが、他の職員が MS-Office からの移行に反対している。
(4)そもそもIT担当者なる人材が役所中見回してもいない。
いかがでしょうか。どれもありそうなだけに、恐ろしい思いがするのではないでしょうか。これは要するに「日本という国の自治体には上から下まで、ITに理解がある人が極めて少ない」と言うことを、如実に物語るものではないでしょうか。 裏を返せば、ITに理解にある人が行政に関わることができない、いやできないような仕組みになっている、という所にこの国の問題があるように思います。
「電子立国」、「技術立国」と言われて久しいですが、それを推進する行政側の無理解は、恐ろしいばかりです。ITに支配されるのはよくありませんが、ITを支配するすべを知らないのはもっと悪いと思います。
願わくば、Windows2000 を使っている自治体から個人情報が大量に漏れ出す前に、Linux への移行を真剣に考えて頂きたいものです。
コメント
技術立国を考えるとき、悲しい過去を振り返ることが必要です。日本が開発したtoronという優秀なOSの存在です。数年前中国の技術者がウインドウズの使いにくさに不満を感じ、日本の技術者にトロンを教えてもらい感激して愛用している話を聞きました。日本の携帯はほとんどトロンを使っているのです。しかし、役人はアメリカに気を使い自らトロンを闇に葬った過去があるのです。
日本の電機メーカーがひそかに家電と携帯にトロンを使っていたのを公にした途端、アメリカの巻き返しでまたピンチになりました。
私の父親が公団職員だったので、事情は垣間見られますが、官公庁でのMS信仰、JS信仰はかなりのものですよ。
親父は今は書斎で、個人的文書にはWordを使っていますが、数年前まで前職の後輩の面倒を見ていたときは一太郎&フロッピーディスク、その前は文豪(ワープロ)でした。
あまり父親を悪くは言いたくありませんが、それでいてWindows95用の麻雀ソフトが他支所から回ってきて、違法コピーしていたので、「全く役人の考えることは…」なんて思います。