民主党政権が発足して二ヶ月が経とうとしていますが、いわゆる「ほころび」というか「ボロ」が次々と出てきたと感じている人も、ちらほらでてきているのではないでしょうか。他ならぬ私もその一人であったわけですが、中でも「日本郵政の新社長に元官僚がなった、これは民主党の『脱官僚』に反する」という記事は、メディアに載らぬ日はないほどでした。
ところが今日、以下のような記事を発見しました。
単純な「官僚支配」批判は的外れ 斎藤郵政社長を起用した合理的理由 [ダイヤモンド・オンライン]
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「なるほどな~、そういうことだったのか。」
読み終えての率直な印象がこれでした。まさに、新聞やテレビが報じないニュースの裏を分析した記事。こういう解説記事を、待っていたのでした。
と同時に思ったのは、「なぜ新聞やテレビなど既存のメディアはこういう記事を書かない(書けない)のか」ということでした。「脱官僚」を水戸黄門の印籠のように振りかざしてただ盲目に批判するだけなら、誰にでもできます。「ブレ」だとか「権力集中」だとか、最近の新聞はとかくワンパターン化したフレーズを使いすぎのきらいがあります。「発言がブレている」ということばを浴びせて誰でも悪玉に仕立ててしまう。そういう報道の仕方が目に付くようになってきています。
けれども、新聞を取っている者は、そのような、2ちゃんねるに無数に書き込まれているようなワンパターンの批判記事を読みたいのではなく、上記のダイヤモンドのような、「出来事の裏にある意図」を、様々な周辺情報や過去の経歴などから読み取り、「つまりこういうことなんじゃないの!?」と読者に提示してほしいと思っているのです。
こと、今回の社長更迭劇は、既存メディアの言うことだけを聞いていると、「民主党がブレた」とか「二枚舌」とか、そういうイメージばかりを植え付けられてしまいます。もちろん健全な批判記事は、政治を監視するメディアの責任として重要なものです。けれどもその批判は、安易なワンフレーズ批判であってはならないはずです。
「何が問題なのか」
「なぜ問題なのか」
「どうすれば問題を解決できるか」
この三点を提示して、初めて意味のある批判記事になります。繰り返しますが、批判するだけなら小学生にもできるのです。記者たる者、そのようなレベルの記事で給料を貰うのはおこがましいとさえ思うのです。
今回の一件を見て、新聞業界が衰退している理由が、少し分かる気がしました。
記事の質が、良質なネットメディアに負けることが多いのです。特に世間に注目されている出来事ほどその傾向が強いように思います。
もし有料の新聞が、無料のブログ記事にその質において負けるのなら、誰がどう考えても、人はブログ記事を読むでしょう。新聞はもはや「事実を報じれば済む」という時代は終わったと、いい加減気づくべきです。初心に立ち返り、骨太で良質な解説記事のウェイトを増やしていかないと、行く先は見えているのではないでしょうか。
以上、既存メディアの奮起を期待する意味で、少々辛口の注文を付けた私でした。
コメント
なるほど~!
経験者の視点からの貴重なコメントありがとうございます。
確かに、大新聞であるがゆえの「裏付け」の必要性については、重要なポイントだと思います。ダイヤモンドの記事にそれがあるのかと言えば、恐らく無いのでしょう。
けれども、このダイヤモンドの記事は、ある意味では「裏付けの取りようがない記事である」というのもまた、事実だと思います。なぜなら、殆どが未来のことを予測して書いたものだからです。
そういう意味では、この記事の確かさは、これから日本郵政を巡ってどんなことが起こるか、ということにおいて検証されていくのだと思います。つまりこの記事は、すでに起こった事の裏を推測するものであると同時に、今後の展望をひとつの視点から予測したものであるともいえるでしょう。私が既存のメディアに願うことは、そういうことです。
ただ、ここで重要な事は、以前当ブログにも書きましたが、いかなる記事であれ、それはあくまで一意見としてとらえ、自分の判断の主体性を安易に委ねてしまわない、ということをしっかりと持っておくことだと思います。そうすれば、色々な意見をオプションとして持ちながら、時世というものに対してより大局的な判断を下していけるようになると思います。
貴重なご意見ありがとうございました!
確かに新聞の記事は面白みがないな、と思います。
このダイヤモンドのコラムを読んだ私の感想は、「裏」が取れているのだろうか、ということを思いました。執筆者を見ると、ジャーナリストではなく、学者ですよね。学者さんの一つの興味深い解釈を書いているのであり、本当の真相がそうかというと疑わしい印象を受けました。
大新聞がこうした記事を載せられないのは、やはりその影響力から、確実な信頼性のあるものしか載せられないからでしょうか。朝日にこの記事が出たら、みんな「そうなんだ」と信じてしまうでしょう。ダイヤモンドは逆に面白い記事を載せないと雑誌が売れないから、信頼性より面白さ重視ということなのではないかと思います。