翻訳記事「ミレニアル世代に届くメッセージのための10箇条 〜異なる世代に向けて説教を整える方法とは〜」

キリスト教
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この記事は、米国福音自由教会のニュースレターに掲載された「10 Ways to Preach to Millennials」に教えられた私が、日本のユースミニストリーに関わる方々にこの記事をぜひ紹介したいと考え、原著者であるJosh Ott牧師の許可を受けて日本語に翻訳し、掲載するものです。可能な限り精査したつもりですが、最終的な訳出の責任は私にありますので、誤訳のご指摘などは私の方までお願い致します。(なお太字は訳者によるものです。)

ミレニアル世代に届くメッセージのための10箇条
〜異なる世代に向けて説教を整える方法とは〜

 年を取るにつれて、若い人々と効果的なコミュニケーションを継続して持ち続けられたらなあ、と思ったことはないだろうか?

 教会文化というものはしばしば、「若者たちと良好なコミュニケーションを取るためには、若くなければならない」と主張することがある。私はこれに同意しない。私が見いだしたところ、ミレニアル世代やもっと若い世代と効果的なコミュニケーションをとる上で、話し手の年齢は関係が無い。むしろ聴衆を効果的に引き込む(engage)ことの方が大切である。聴衆の全体を神のことばの真理へと引き込むこと、福音を巧みで効果的に伝えてそれを行うことは、若い世代に届くあなたの能力を示す、あなたの年齢よりもはるかに重要な指標なのである。

 つまり、我々はみな自らのコミュニケーションのスキルを洗練させ、異なる年代のグループに対して福音を効果的に伝えるために、それを適応させることができるということである。ミレニアル世代は1981年から1996年にかけて生まれた人々と広く定義されているが、この世代に届き続けるためには、あなたの説教を洗練させることによって関わり(engagement)を築かなければならないのである。今の時代は、何を語り、どのようにそれを語るかが、かつて無いほど重要になっている。ミレニアル世代は、世界が急速に変化していく時代に育ってきた。既存の組織への信頼が多方面で失われていくにつれて、我々の多くは、講壇からミレニアル世代とコミュニケーションを持つことに難しさを感じつつある。年配世代は「何を言っとるのか?」と問うが、ミレニアル世代は「なぜ”何を言っとるのか?”なんて言うんですか?」と問うのである。〔訳注:年配者が若者の文化や言葉が分からないと言うこと自体、ミレニアル世代の目には奇異に映る、という意味だと思われる〕

 私は青年担当牧師や説教者として、また現在は主任牧師として、過去20年間に渡りミニストリーに従事してきたが、ミレニアル世代に届くことにその焦点の大半を置いてきた。さまざまな方法で私は、彼らと共に成長してきたと言えるかも知れない。各地を回り、キャンプやリトリートやカンファレンスで過去16年間、ミレニアル世代に語ってきた私は、この特定の年齢集団とコミュニケーションを行い、信頼と関わりを築く効果的な方法を見いだした。

 あなたの教会には400人中4人しかミレニアル世代がいないかもしれない。そこで、この世代のメンバーとコミュニケーションを築き、関わり(engagement)を築くために最も大切な10箇条を以下に挙げておきたい。

1.あなたの個性(personality)を表せ

 無限の知恵に満ちておられる神は、あなたに説教の機会をお与えになった。神のことばを届けるためにあなたをお選びになったのである。だから、講壇に立っているとき、あなたが何者であるかを隠してはならない。襟を開いて、あなたの兄弟姉妹があなた自身を見るようにすべきである(Iテサロニケ2:8)。彼らがあなたを見るとき、神があなたのうちに、またあなたを通して何をなされたかを見るであろう。それは、あなたの原稿やアウトラインを遙かに上回って語ることができるのである。すべての世代が真実であることを歓迎するだろうが、ミレニアル世代はそれを要求(demand)するのである。あなたが自分の個性を表すとき、あなたの説教には真実性(authenticity)が備わるのである。

2.簡潔(concise)であれ

 ミレニアル世代の時間を浪費してはならない。あなたは、聴衆をその間ずっと関わらせ(engage)続ける限り、20分でも40分でも効果的に説教することができよう。語っているとき、あなたが聴衆を「読む(reading)」ことができていれば、あなたは彼らを関わらせ続けているだろう。アイコンタクトを取っているだろうか? 聴衆はあなたに非言語的な応答をしているだろうか? あなたが説教の間、聴衆がどの程度引き込まれて(engage)いるかを読むことに難しさを感じるのならば、信頼の置ける友人に、正直で具体的なフィードバックを求めるべきであろう。

3.目的を伝達せよ

 聴衆に対して、「あなたには目的(purpose)があり、その目的に沿って日々生きるよう召されているのだ」と意識させ続けよ。神が人生に与えた目的について語ることは、ミレニアル世代を奮い立たせ、イエスに従う刺激的で冒険的な未来へと至らせるからである(Iペテロ2:9)。ミレニアル世代は、目的を持つためには何をすればよいのかを知りたがっている。彼らは単に職を欲しているだけではない。仕事に意味(meaning)を求めているのである。例えば、この年代層の多くの人々は、社会的にインパクトのあるキャリアパスをたどろうとする。神が人生に与えた目的へとミレニアル世代を招くことは、彼らが行う全てのことに対して意味を与えるのである。

4.彼らの夢について語れ

 ミレニアル世代は自分の将来について大きな夢を抱いている。同時に彼らは、夢はいつもうまく実現するものではないという現実にしばしば対処しなければならない。彼らは自分がしたい、あるいはなりたいと望むことはどんなことでも可能だ、と言われて育ってきた。不幸なことに、多くが職場に足を踏み入れるにつれ、彼らは自分の夢と現実は常に整合するものではないと認識してきている。目的(purpose)は彼らのすることの意味を告げてくれるが、彼らの夢に対して語りかけることは、彼らに未来へのビジョンを示すことになる

 ミレニアル世代に、彼らの将来の夢について語るときに私がよくシェアするみことばの一つがエペソ3:20である。このみことばは、我々と彼らのどちらに対しても、神は「私たちのうちに働く御力によって、私たちが願うところ、思うところのすべてをはるかに超えて行うことのできる方」であることを思い出すよう、招いてくれるのである。

5.透明であれ

 透明性(transparency)は、誰もがそれを望んでいるが、ミレニアル世代にとっては特に重要なものである。あなたはメッセージの中心主題をどうするかで苦労したことがあるか? 聖書のトピックがあなたの理解を混乱させ、適用を難しくさせたことはあるか? あなたがこの真理を学び、適用した結果見てきた、あなた自身の人生の実は何か? 説教準備をするとき、こういった問いについて考えることは、あなたのメッセージに透明性を織り込む助けになるだろう。 イエスがマタイ26:38で「わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここにいて、わたしと一緒に目を覚ましていなさい」と語られたとき、透明性のモデルを示されたのである。

6.聴衆に他者を助けるよう励ませ

ミレニアル世代やより若い世代に対しては、他者を助け、他者に仕えるよう動機づけよ。みことばの適用を教えるときには、他者に仕えるためのビジョンを示せ。ミレニアル世代に外への関心を持たせることは、神が彼らに持っておられる目的を彼らが理解する助けとなる。「また、愛と善行を促すために、互いに注意を払おうではありませんか。」(ヘブル10:24)

7.関連付けて語れ(Speak relationally)

関連付けて語るとは、毎月、関係性についての連続説教をする、という意味ではない。関連付けて語るとは「あなたの聴衆のストーリーと、彼らのテクストへの関連性とを結びつける」という意味である。次のような問いに答えよ。「このテクストは彼らの人生にどんな意味を持っているか?」「このみことばは彼らの関係性にどんな示唆を与えているか?」

8.なぜ、を語れ

 ”なぜ”は非常に重要である。”なぜ”に答えることは、大脳辺縁系(意志決定を司る脳の部位)を活発にするだけでなく、私たちが説教する御言葉の価値を伝える助けにもなる。あなたがなぜその説教においてそのメッセージを語るのかを語れなぜそのテクストが、元の文脈において重要であるのかを語れ。なぜそれが聞き手にとって大切なのか? なぜそれが今重要なのか?

 私は、パウロがなぜ生きていることが重要であり、なぜピリピの教会にとってそれが大切であるのかを明快に定義した次の箇所が好きである。「私は、その二つのことの間で板ばさみとなっています。私の願いは、世を去ってキリストとともにいることです。そのほうが、はるかに望ましいのです。しかし、この肉体にとどまることが、あなたがたのためにはもっと必要です。このことを確信しているので、あなたがたの信仰の前進と喜びのために、私が生きながらえて、あなたがたすべてとともにいるようになることを知っています。」

9.中心主題を明確に定義せよ

 日曜日の朝に提供される大半のメッセージでは、中心主題が文脈の洪水の中に失われてしまっている。原稿を準備するときには、明快さを求めて戦え。もし説教の中心主題を、一つの明快な短い文章で説明できないとしたら、あなたはそれをもっと明瞭にする必要があろう。ひとたびそれが定義されたなら、メッセージの全体を通して、その中心主題を伝達せよ。強調して繰り返せ。それぞれの話題や適用事例を、中心主題に結びつけることを忘れてはならない。

10.あなたのメッセージが流れる(flow)ようにせよ

 あなたの説教の流れに取り組め。説教は、初めから終わりまでスムーズに動き、メッセージの中心主題(と副次的なポイント)を明確かつ効果的に描くものでなければならない。次のような問いについて、自分自身に問うてみよ。「ポイントとポイントの間を、どう遷移させているだろうか?」「このメッセージは導入から主題までどのように動いているだろうか?」「どのように、またいつ適用について語るのだろうか?」「遷移はスムーズで自然で、テクストに沿ったものだろうか?

 使徒17:16〜34に見られる、パウロがアテネで行った説教を読むことは、私のお気に入りである。それは、福音を示すときに、メッセージに明確な流れと構成(build)がある、非常に美しい事例である。

 

 偉大な伝達者(communicators)は生まれついてのものだ、という神話がある。現実はこうだ。神が我々に賜物を与え、整えて、神が我々の前に置かれた機会の多くを成し遂げさせて下さるのである。自らに与えられたもの(giftedness)に対して最善を尽くすことは我々の責任である。最高の伝達者とは、常に道具を手入れすることで自らに与えられたものを管理する人々のことである。神の恵みによって、我々はすべての年代を引き込もうと、努力することができる。年齢に関係なく、自らの説教者としての道具を常に磨くなら、神のことばの驚くべき真理によって、そうすることができるのである

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