NHKスペシャル「サイボーグ技術が人類を変える」を見て

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今晩NHKで放送された番組「サイボーグ技術が人類を変える」は、真の意味で、私にとって衝撃的であった。

  1. 腕の神経を胸にまわし、胸を少し動かすことで、失った両腕を動かすようにする技術:すでに実用化。
  2. 脳に埋め込んだ人工内耳を経由して、失聴者が聞こえるようになるシステム:すでに広く利用されている。
  3. 脳に埋め込んだ電極に電気刺激を与えることで、パーキンソン病が劇的に改善:米国ですでに2万人以上の手術例。
    日本でも手術が行われている。
  4. 重いうつ病の患者の脳の「悲しみ」を感じる部分に電気刺激を与えることで、症状が劇的に改善:すでに実用化。
  5. 脳に電極を埋め込むことで、「考えるだけ」で機械を動かせるシステム:研究段階だがすでに簡単な機能は実現。
  6. マウスの脳に電極を埋め込み刺激を与えることで、思い通りに動かせるシステム:すでに実用化。
  7. 記憶を司る「海馬」という部分にICチップを埋め込み、記憶そのものを取り替えられるようにするシステム:
    マウスレベルで研究中。

等々、非常に深い内容であった。6に関しては、以前このブログでも「サイボーグ・ラットの驚き」として記事を書いたが、今回の番組は、
それを遙かに上回る内容であった。ネズミがキーボードの右左のキーのままに動くのは、不気味だが驚きである。

驚くのは、脳から出た信号を読み取るというpassive(受動的)な方法のみならず、active(能動的)に脳に電気を流し、
脳の方を制御していこうという方向に、研究が進んでいることである。インタビューを受けていた教授によれば、研究が進めば「幸福感」など、
他の感情も制御できるようになるかもしれない、とのことである。

7もすごい。「あなたの記憶は、あなた自身のものではない。我々がインプットしたものだ」などという、
ヘタなSFハリウッド映画のような世界が、すぐそこに「現実」として迫っているのである。なんだか、めまいさえ覚える。

こうした技術を手放しで喜んでいる人たちもいるが、果たしてそれでよいのだろうか。確かに、パーキンソン病に苦しんでいた人たちが、
脳に電極を埋め込む手術を受けて劇的に回復し、日常生活を取り戻して、涙を流しながら医者に感謝している様子を見ると、
考え込んでしまうのである。どう考えても、良いことのように思える。しかも、薬物や遺伝子操作などと違って、
微弱な電気信号をやりとりするだけのシステムは、はるかにリスクが小さい。脳は、そのような信号をすぐに学習し、それにうまく適応(「進化」
とは違う)していく能力を持っているのである。

しかし、技術屋というものは、非常に暴走しやすい集団であるということを、忘れてはならない。私自身、
専門が情報科学出身なので少しは分かるのだが、「すごい発見をした、○×を実現した!」と考えると、興奮してしまって、
その技術が当初とは違った方向に用いられる可能性に、あまり考えが回らないのである。しかも、一度回り出した車輪は、もはや止まらない。
エンジンができたら、あとは性能を高めることしか、思い浮かばない。

それが、技術屋というものである。
だから、危惧する。

「人間とは何か」という問いが、今後10年、20年の主要テーマになる気がする。キリスト者は、それにどう応答していくのか。
それが問われる。

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