私はウェブブラウザは、もうかれこれ10年以上、Firefoxを使用してきました。Windows環境においても、Mac環境においても同じです。世の中は圧倒的にChromeユーザーが多いのが現状ですし、Chromeの方が表示速度も速いと言われているにもかかわらず、あえてFirefoxを利用する理由は何か。それは「アドオンの自由度」です。Firefoxはアドオンの自由さでは突出したレベルにあり、それが無数の有用なアドオンを生み出し、Firefox独自の文化を形作ってきたことは間違いないと思います。
ところが。FirefoxはVer.57から、これまでサポートしてきたアドオンを、WebExtensions(WE)と呼ばれる新しいプラットフォームに全て移行させ、旧アドオンを強制的に動作不可とする、という思い切った措置を行うことを発表しています(参考記事)。その目的は、アドオンをChrome互換として開発しやすくし、かつメモリ管理を強固にして速度と安定性を向上させるためだそうです。ただ、アドオンの強制的な使用不可は、長年Firefoxを使用してきたユーザーにとっては非常に痛い話であり、Firefoxの魅力を完全にスポイルする愚行、と感じた方も多かったのではないかと思います。単純な速度を追い求めるのなら、Chromeにすれば良いからです。実際私もその一人であり、この機会にFirefoxに見切りを付け、Chromeに移行すべきか真剣に検討し、Chrome版の代替アドオンを探して、9割方移行できるまでにした訳です。
ところがそのプロセスにおいて、Firefox時代には当然出来たことが、Chromeではできないということが「あまりにも多い」ことに気づき始めました。例えば、Firefox57では userChrome.css というファイルを使用することで、ある程度UIを変化させることができますが、Chromeでは不可能です。また、Firefoxではタブを全て閉じた後もウィンドウを表示し続けることができますが、Chromeでは、このような単純な事柄さえ、プラグインを使用しなければ実現できません。さらに最も気になったのは、SSL接続の場合、Firefox57ではロケーションバーの左端にきちんと組織名が表示され、さらにSSL証明書の内容も詳しく見ることができるのに対し、Chromeではこれができないのです。これでは安全性に劣る、と個人的には判断せざるを得ません。また、デバイス間の同期でGoogleに頼ることへの心配も、個人的にはあります。私は、個人情報は一企業だけに集中して預けるべきではない、と考えており、「何でもGoogle任せ」は好ましくないと思うからです。その点、Firefoxであればブラウザ情報のみに同期を限定させることができます。また、面倒な設定やサーバー立ち上げなどかなりハードルは高いものの、自前で同期サーバーを立てることも可能です。
こうなると、あとはアドオンさえ旧来のXULベースから、WebExtensions(WE)ベースのものに移行できれば、Firefoxを使い続けることができるようになります。そこで、Chrome移行を中断し、WebExtensions(WE)対応版のアドオンをテストして、移行に耐えうる環境を構築してみたところ、95%程度はカバーできることが分かりました。そこで、今回記事を書いてみた次第です。以下では分野別に、移行前と移行後のアドオンを列挙してみたいと思います。
既にWE化されているもの
(2017/12/28現在)
以下のアドオンは、既にWE対応が完了しているため、そのまま使用することができます。いずれも、Firefoxユーザーであれば必ず入れておきたいアドオン、と思います。
1Password
パスワード管理ソフト1Password用のアドオンです。Macの他にWindows、iOS、Androidの各プラットフォーム間でパスワードの同期が安全に行えます。強力なパスワードの作成機能もあります。値段は少々張りますが、類似のソフトに比べ、クラウドを使用しないWi-Fi同期が可能だったり、自分で指定したフォルダで同期する機能があるところが優れています。パスワードの使い回しは大変危険です。もはや「覚える」ことはやめて、この手のソフトに任せた方が良いと思います。
Ghostery
GoogleAnalytics等のトラッキング(追跡)コードをブロックするアドオンです。別サイトにも関わらず以前調べた商品の広告がでるような場合は、トラッキングが原因です。このアドオンを使用することで防止することができます。
uBlock Origin
広告除去のアドオンです。AdBlockPlus(ABP)が有名ですが、ABPはいわゆる「消極的な広告」をあえて許可する仕組みがあって、一時期問題視されたことがあります。uBlock Originにはそのようなことはありません。また、一般的にはuBlock Originの方がABPよりも動作が軽いとされています。
Privacy Badger
ユーザーのプライバシーを擁護する電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)が作成した、プライバシー保護ソフトです。一般的に、GhosteryやuBlockよりもさらに強力にトラッキングを防止してくれます。
HTTPS Everywhere (2017/10/30WE対応)
SSLに対応したサイトでは常にSSLで接続するようにするアドオンです。プライバシー保護のために必須と言えます。
Keepa
Amazonの商品紹介ページで、過去の価格変動履歴をグラフ表示してくれる、大変有益なアドオンです。商品が設定した価格を下回った場合にメールで教えてくれる機能は、特筆ものの便利さです。このアドオンを使用することで、高い時に購入しなくて済みます。
Open With(2017/11/12WE対応)
Firefoxを利用していて、別のブラウザーでどのような表示になるかをチェックしたくなるときがあります。そのような場合に、ワンクリックで自動的にブラウザーを立ち上げて当該ページを表示してくれます。WE対応にあたり、インストールがやや面倒になりましたが、それだけの価値はあるアドオンです。
New Tab Tools
OperaのSpeedDialに似た、ブックマーク管理ソフトです。Firefoxの初期画面に設定することで、よく訪問するサイトをサムネイル画像付きでタイル表示することができます。情報収集が格段にスピードアップする良アドオンです。
OneNote Web Clipper
ご存じMicrosoft OneNoteに閲覧中のページをクリップするためのアドオンです。
Evernote Web Clipper
同じくEvernote用のクリップアドオンです。
No Squint Plus(2017/10/27WE対応)
サイトによっては、CSSの文字サイズが小さすぎて見づらいことがあります。このアドオンを使用することで、文字の大きさを変更しても、それをサイト毎に別々に記憶してアクセスするたびに再現してくれます。
NoScript(2017/11/21WE対応)
閲覧中のページ上でJavaScriptの実行を停止させるアドオンです。デフォルトでは全て禁止するようになっていますが、たいていのサイトはそれでは正常に表示できませんので、安全が確認されたサイトを解除していく、という使い方が良いと思います。
別のアドオンに移行が必要なもの
タブ操作系
Tab Mix Plus → FoxyTab + Popup Tab + Shortkeys + Saka Key
Tab Mix Plusはあまりにも多機能なプラグインであるため「替えが効かない」ものとして有名ですが、それでも上記の組み合わせで私が必要としている機能の多くはカバーすることが出来ました。現時点で実現できていないのは、「右側のタブを閉じるショートカット」と「左側のタブを閉じるショートカット」の二点です。但し、FoxyTabは非常に活発に開発が行われており、近い将来、対応されるものと期待しています。Popup Tabは、Tab Mix Plusにあった、ポップアップするウィンドウをタブで表示する単機能のアドオンです。Shortkeysは、Tab Mix Plusのショートカットキー割り当て機能に相当するアドオンで、JavaScriptを実行する機能もあり、非常に細かいカスタマイズが可能です。
(2017/10/27追記)Saka Keyという新しいアドオンを発見しました。Shortkeyを遙かに上回る、非常に細かいカスタマイズが可能なショートカットキー割り当てアドオンです。JavaScriptの実行機能さえ付けば、Shortkeysの完全な代替となりうると思います
(2018/2/6追記)待望のTab Mix Plusの WE対応版 の開発が始まっています。今のところ、リンク関連機能のみ実装されているようです。今後のアップデートに期待大です!
スクリプト系
Greasemonkey → Violentmonkey
Greasemonkeyは、スクリプトを使用してサイトのUIを変更したり、オートスクロールを実現することができる、非常に有用なアドオンです。代替としては他にTampermonkeyも知られていますが、Violentmonkeyの方がオープン度合いが高い(オープンソース)であるため、こちらを採用しました。なお、Greasemonkeyで動いていたスクリプトが動かなく場合もありますので、テストが必要でしょう。
Violentmonkey用の有用なスクリプト
AutoPagerize [Modified by BladeMight]
こちらは同名の旧アドオンがWE対応していないため、代替として使えます。使用感は全く同じで、完全に置き換えられると思います。たいていのサイトにおいて、「次のページ」を自動でめくることができ、大変便利です。
(2017/12/28追記)uAutoPagerize という新しいアドオンが出ています。機能的にも申し分ありません。上記のViolentmonkey用スクリプトよりも設定がしやすいため、こちらのアドオンを使用された方が良いかも知れません。お試し下さい。
GoogleMonkeyR Fix(Jul 2017)
Google検索の結果を、以下のように見やすくデコレーションすることができるスクリプト。大量の検索結果を効率よく見ていくときに欠かせません。列数や背景色など細かいカスタマイズができるのも大変素晴らしいです。ぜひ一度、お試し下さい。
RSS+Atom Feed Subscribe Button Generator
ブログなど、RSSやAtom配信がある場合に、ページの左上に以下のようなインジケーターが表示されます。
ボタンを押せば、各プロトコルにリンクされているプラグラム(またはサイト)にてフィードを購読することができます。
カスタマイズ系
NoSquintPlus → Zoom Page WE
ページの文字が小さい場合に、文字のみ拡大/全体を拡大 など、様々な方法を選べるアドオン。さらに、各サイト毎に拡大率を記憶しておいてくれるので、再訪問した際にはその拡大率が自動適用されるすぐれもののアドオン。
(2017/10/27追記)幸いなことに、No Squint Plusは10月下旬にWE対応が果たされました。従って、Zoom Page WEへの移行は必要なくなりました。
Stylish → Stylus
サイトのCSSに自前のスタイルをかぶせることで、サイトのUIを様々に改変できる、大変便利なアドオン。私はこのアドオンに以下のスクリプトを読み込ませて、サイト全体をヒラギノ角ゴシックで表示させるようにしています。Mac環境の方は文字が大幅に見やすくなり、お勧めです。
@font-face {
font-family: "Hiragino";
src:local("Hiragino Kaku Gothic ProN W3");
font-weight: normal;
}
@font-face {
font-family: "Hiragino";
src:local("Hiragino Kaku Gothic ProN W6");
font-weight: bold;
}
* {
font-family: "Hiragino";
}
(2017/11/13追記)どうやら2017/11/10公開のVer 3.01から、Stylish本体がWE対応したようです。但しレビュー欄には「動作しなくなった」とか、「スクリプトが消えた」という報告が多数寄せられていますので、もうしばらく様子を見た方が良いかも知れません。
(2018/7/4追記)こちらの記事によると、Stylishはユーザーの閲覧履歴を「すべて」収集していたことが発覚し、使用禁止となった模様です。その意味でも、Stylusが良いでしょう。
Advanced LocationBar → breadcrumbus
以下の画像のように、ロケーションバーのURLにおいて、一つ上の階層に戻りたい場合などに大変便利な、いわゆる「パンくずリスト」アドオン。Advanced LocationBarにおいては、ロケーションバーの上からカーソルを動かした場合と、下から動かした場合とで挙動を変えるという風な細かい設定ができましたが、breadcrumbus にはそのような機能は(まだ)ありません。また、WEではUIの直接変更が難しいため、Advanced LocationBarのような、ロケーションバー上のアドレスを直接パンくずリスト化することはできません。
(2017/11/13追記)最近になって、「Scroll Up Folder」という、新しいアドオンが登場しています。テストしていますが、こちらの方が使いやすいかもしれません。
Australis-like refresh in URL bar
これはFirefox56まで(Australisテーマ)は実現できていた、以下のような「ロケーションバー内の再読み込みボタン」をFirefox57でも実現するアドオンです。
適用すると、上の「Advanced〜」の写真にあるように、ロケーションバー内に再読み込みボタンが表示されます。ツールバー内に再読み込みボタンがあるのがどうしても違和感がある、と言う方(私のような…)にお勧めです。
ツール系
User Agent Switcher → User-Agent Switcher (revived)
銀行サイトやモバイルSuicaサイトなど、User Agent情報を用いてFirefoxをはじくサイトがいくつかありますが、そのようなサイトでも閲覧を可能にするために、User Agentを他のブラウザー(Chrome、IE、Edgeなど)のものするのがこのアドオンです。まぎらわしいのですが、WE版は同名になっています。他にも同名のアドオンがありますが、上記のものはWE対応です。
テキストリンク → テキストリンク&Google翻訳
ネット上の記事には、時々、URLの一部をわざと欠いた表記で書いている場合や、URLであるにも関わらず、リンクが張られていないという場合があります。例えば以下のようにです。
ttps://gatevalley.com/hamuranokaze/202/
このような場合、通常であれば上記のURLをロケーションバーにコピペして、なおかつ冒頭の「h」を補ってからEnterキーを押す、という手順が必要になります。上記のアドオンは、この一連の作業を自動で行ってくれる、大変便利なものです。
Thumbnail Zoom Plus → Hover Zoom+
このアドオンは、FacebookやGoogle Imagesなどのサイトで、サムネイル画像の上にカーソルを動かして一定期間(0.2秒など)動作を止めると、その画像を実際のサイズで拡大表示してくれる大変便利なものです。従来では、サムネイル画像はいちいちクリックして別のタブに表示させて確認する必要がありましたが、このアドオンを使用することでそのような面倒な動きから解放されます。
(2017/11/21追記)数日前からHover Zoom+の公開が停止されています。このままフェードアウトするのか現時点では分かりませんが、代替のアドオンが見つかり次第、紹介したいと思います。 → 2017/11/29に復活したようです。
FireShot → Nimbus Screen Capture
最近のFirefoxでは、スクリーンキャプチャ機能は標準で備わっており、必ずしもアドオンは必要ではないのですが、Nimbus Screen Captureは標準機能にはない、細かい出力オプションを有しており、使い勝手が良いです。
情報収集系
Pocket → In My Pocket
Firefoxでは、アドオンに頼らずとも最初からPocketが組み込まれていますが、お世辞にも使い勝手が良いとは言えませんでした。そのため、旧アドオンシステム上で動く旧Pocketアドオンを使い続けていた方も多かったのではないかと思います。In My Pocketは、私が調べた範囲では、旧Pocketアドオンの機能をほぼ網羅している最も使いやすいアドオンでした。(保存ページのリスト表示に若干時間がかかるという点のみ気になります)
Feedly → Feedly Notifier
もはや説明不要のRSSリーダーがFeedlyです。Pocketとともに、私の情報収集に欠かせないツールとなっています。
Update Scanner → Web Pages Scanner
ウェブサイトに更新があったときに、通知してくれるアドオンです。仕組みとしては、設定した時間間隔ごとにFirefoxが自動的にサイトにアクセスして、相違点があるかどうかを調べ、あれば通知を出してくれます。Web Pages Scannerは、Update Scannerの機能をほぼ全て網羅しており、かつ、デザイン的にも洗練されています。唯一の欠点は、通知するときの効果音を選べないことですが、これは将来のアップデートで対応されるのではないかと思います。
セキュリティ系
Searchonymous → Searchonymous WE
GMailなど、Googleのサービスにログインしている方は多いと思いますが、その状態でGoogleで検索をかけると、検索履歴が全てGoogleの手に渡ることになります。検索履歴は重要なプライバシーであり、できるだけ秘匿したいという方もおられるでしょう。そのような方は、このアドオンを使用することで、Googleへのログイン状態を維持しつつ、Google検索を行うときだけログインしていない状態で検索することができます。大変便利です。
Link Cleaner
これは今回の移行作業から新しく導入したアドオンです。URLをコピーするとき、標準では色々なオプションが付加されてしまいますが、これをきれいにしてくれるアドオンです。
削除できるアドオン
FlashBlock → 削除
Firefox57では、初期状態でFlashコンテンツの自動実行はオフにされています。(画面上の有効にするボタンを押した場合のみ閲覧できる)。従って、FlashBlockをインストール必要はないものと思います。
現時点でWE未対応だが対応が待たれるアドオン
以下は、2017/10/12現在でWEに対応していないもので、代替となるアドオンが見つからないものであり、近い将来の対応が待たれるアドオンです。
Tab Mix Plus
2018/2/3に、限定的な機能ながら Tab Mix WebExtension と改名した WE対応版 が初公開されています。今後、機能が徐々に充実していくものを思われます。インストールしておきましょう。
コメント
waterfoxに乗り換えてそのまま使う案もありかも知れません。
私の場合、今まで使っていた物が全てそのまま使えています。
[…] FirefoxアドオンのWebExtensions限定化に備える […]