首都大学東京の学生二人が、動画サイト Youtube に、他者の人格を著しく傷つける動画を無許諾でアップロードしたことにより退学処分となり、協力したもう一人の大学院生が停学処分を受ける、というニュースが、昨日から今日にかけて、大手新聞および民放テレビ(FNN)でも流れています。
彼らが面白半分に行い、その結果極めて高い代償を払わざるを得なくなったその行為については、検索すればいくらでも出てきますが、とりあえずは 日経新聞の記事 をご覧頂きたいと思います。その行為は、非難に値するものであり、受けた処分は避けられないものであったと思います。けれども、インターネットというメディアについて、しっかりとしたリテラシーを持っていれば、このようなことにはならなかったとも思います。そこで、ネットの特性という観点に的を絞って、彼らの犯した問題点をまとめたいと思います。
1.「インターネットは地球上で最も公共性の高いメディアである」との認識が無い
彼らは、面白半分で、被害者女性の動画を無許諾で Youtube にアップロードしました。彼らとしては、ネタとして受け入れられるだろう、仲間内で盛り上がろう、よしんば角が立つとしても笑って収まるレベル、と判断したのでしょう。「どうせこんな動画、それほど目につかないだろう」。 そう考えたのかも知れません。しかし、インターネットという場所は、日本で最も衆人の目につく場所なのです。 渋谷駅前交差点は、恐らく日本で最も人が密集している場所だと思いますが、ネット上に比べればそことてものの数ではありません。一億人の目に曝される可能性のある場所。それがインターネットです。そういう基本的なデータが頭にない、あるいは自分がどこに情報をさらそうとしているのか理解していない人が、このような罠に陥るのです。
同じ事は私たちにも当てはまります。 mixi、ブログ、twitter、プロフ上などで、「これくらい大丈夫だろう」と考えて、こっそりと行ったいたずらや人の悪口を書く人がいます。 しかし、ネットに記した瞬間、それは最も強力な証拠となって、後にあなたを訴えるものとなりうるのです。一旦ネット上に上がったデジタルデータは、もはや永遠に消えることはないと考えてよいのです。ブログなり、mixiなり、Youtubeなり、twitterなりを利用する場合は、そういう覚悟を持って情報を上げるべきです。
自分が何をしようとしているのか正確に理解していないならば、ネットなど利用するべきではない。これが私が1995年からずっとネットに触れ続けていて肝に銘じてきたことです。しかし特に若い世代には、あまりにも危機意識が薄いように思え、心配でなりません。
2.2ちゃんねるの力を考慮に入れていないか、あるいは過小評価しすぎている
今回の事件は、事実上、巨大掲示板「2ちゃんねる」のユーザーによってこれほど大きな事件となり得た、と考えても間違いはありません。もちろん2ちゃんねるユーザーを非難しているのではなく、正しい認識を持つべきだという意味でこう言っているのです。
今回の首都大学の学生の行為は、2ちゃんねるのユーザーの「義憤(?)」を巻き起こし、瞬く間に非難のスレッドが立ち上がり、首謀者を特定して処罰してやろう、という運動が巻き起こりました。問題の動画には非難のコメントが殺到し(「炎上」と呼ばれる)、学生の個人情報が手当たり次第に集められ、2ちゃんねるユーザーによって公開されていきました。いわゆる「祭り」と呼ばれる状態です。
結局、半日くらいのうちにはこの出来事に関わった学生・研究室の教授名・友人の実名がリストアップされましたし、中心人物の学生は、実名以外にも住所・携帯番号・メールアドレス・顔写真・卒業アルバムの写真などが次々とアップロードされ、衆目に曝されることになったのです。こうなると手が付けられません。 制御を失った群集心理というものでしょうか、学生の内定先に電話をしようとする試みや、大学に避難の電話を入れようとする人も次々と現れていきました。 恐らく大学側も、彼らからの告発によって、動かざるを得なくなったのではないかと思います。それほどに、2ちゃんねるというメディアの力は、大きなものがあります。日夜を問わず、次々と個人情報が調べ尽くされ、日本中にさらされていく・・・。 その進行スピードは恐ろしいまでのものがあります。
私はこれまでにも、何回かこのような「祭り」が発端と思われる、壮絶な個人攻撃のありさまを耳にしたことがあります。有名なのは1~2年前だったと思いますが、「ファーストフード店のバイト先で、揚げ物にゴキブリをいれました!」とmixiの日記に書き込んだ学生の一件。 まさに今回の一件と同じようにして、瞬く間に個人が特定され、過去の日記がさらされ、学校には非難の電話が鳴り続け、顔写真は公開される・・。そういう経過をたどったのです。そのすさまじさは背筋が寒くなる思いすら覚えたほどでした。
日本には、いやネット上には、そのような巨大な力を持った巨大掲示板が存在しているのです。インターネット上に情報を公開すると言うことは、そのような人々の目に自分をさらす、ということなのです。私が上の1.で書いたのは、まさにこういう事実があるからなのです。
・・・そういうわけで、ネットを利用する場合は以下の点に注意すべきだといえるでしょう。
1.自分の書いた情報は全世界に向けて発信されるのだ、という認識を常に持つ。
2.ネットに一度書いたら永遠に残る、くらいの感覚で発信する。
3.個人情報の管理には細心の注意を払い、露出を必要最小限度に保つ。
4.特に写真の公開に気をつける。無駄に解像度の高いスナップなどをアップしない(顔が入っているなら縦横200ピクセル以下くらいにした方が無難)。
5.他者の人格を傷つける書き込みや誹謗中傷などは厳に慎
む。またそのようなことをしている人に軽い気持ちで迎合しない。
上に上げた項目は最小限度のもので、実際はこの他にも危険は山ほどあるのですが、それはまた別の機会にします。とにかく、「ネットの人々はあなたの文章を常に見張っているのだ」くらいの思いでいてほしいと思います。
「祭り」になってからでは遅いのです。
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